2014/12/15

ネコソギラジカル読了


 以前に人喰い生人さんに教えてもらって読み始めた西尾維新の戯言シリーズ、約一年かけて読み終わりました。あとがきによれば大体二百万文字、史記が五十二万文字ですから単純に比較はできないですがとても長いお話でした。長いと言っても一度ページをめくりだすとトイレに行くのも我慢したくなるほど続きが楽しみだった作品だったと思います。読み始める前、イクヒトさんにはあまり合わないかも、翻訳小説のようで読みづらい、などご自分のキャラのモチーフにしたぐらいお好きな作品だから薦めてくれたのに、気に入ってくれるか心配そうなのがちょっと可笑しかったのを覚えています。

実はこの表紙
一巻は読まなくても大丈夫と最初にすすめられたのが二巻のこのクビシメロマンチストでした。西尾維新の小説は一つも読んだことがなかったので、合うか合わないか多少不安でしたが、初期の作品は推理小説仕立てになっているので比較的受け入れられやすい気がします。推理小説は森博嗣で慣れていたので多少周りくどい語りにもすんなり受け入れることが出来ました。推理小説のお約束みたいなものとして、犯人は登場人物、それも比較的ぽっと出でない人、密室には必ずトリックがあってそれを出来るのは誰かという事から答えを探っていくというお約束がしっかり踏襲されていて買ったその日のうちに読み終わってしまうほど楽しかったです。語り手の「ぼく」の考え方には少し合わないものがあって、次の話をamazonでポチるにはかなり時間がかかってしまいましたが。
イクヒトさんのファッションはこの人が元なのかと思っていました
トリックを理解するのが少し難しいのもあって、イクヒトさんと答え合わせのように内容を語り合っているうちに、作中で使われているジョジョのネタで盛り上がったり、ヴィンラント・サガやヒストリエの話題で話が合ったりもしました。イクヒトさんは私のキャラの絵を描いてくれた事からもわかるように絵を描くのがお好きみたいで、ヴィンラント・サガや戯言シリーズの挿絵を描いている方の絵の線の描き方、線だけでつくる立体感の凄さみたいなものを熱く語っていました。

イクヒトさんが描いてくれたdreiさんのドット絵です。ありがとう!
以前anmiさんが、設定がちゃんと語られている物語はわかりやすくて良いと仰っていました。戯言シリーズはどうだったかというと、設定というか過去のお話は殆ど語られず、思わせぶりな記述から、語り手の「いっくん」や登場人物達が抱えている痛みを推し量ることしかできません。それをキャラ付けの記号に過ぎないとして批判することもできるのかもしれませんが、私はむしろ語られない方が良かったと思っています。
 この物語は終始語り手の「いっくん」 の視点で進んでいきますが、個性ある多くの登場人物達がいっくんの知らないところでそれぞれが主人公の物語が進んでいたことが推察できます。この戯言シリーズは語られなかった物語達の一つに過ぎない事が読んでいてよくわかります。イクヒトさんと話のあったヒストリエも、私達はエウメネス達が迎える悲劇的な結末を知っていますが、結末を知っていても面白さは全く損なわれることがありません。残酷な言い方ですが、人間は他人が血や涙を流す過程を見るのが好きだからです。「いっくん」も幾度も凄惨な目にあい、何人かは救うことも出来ず、誰も傷つけることが出来ませんでした。そんな弱い彼がもがいて苦しんで失っていくのを読んで、初めはとっつきにくかったいっくんの語りも、巻を進めるにつれどんどん惹き込まれていきました。
 物語の終盤、世界の終わりは人の数と同じだけあるといういっくんの言葉があります。自分にはどうしようもない大きな力が働いている世界で、それでもなんとか彼は自分の小さな物語を終わらせました。それによって救われた何人もの人達の幸せが、表紙の四つ葉のクローバーなんじゃないかなと思っています。
 イクヒトさんこんな素敵な作品を教えてくれてありがとうございます。イクヒトさんの元ネタのキャラは外伝にも出ているみたいなので、そっちもまた読んでみようと思います。

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